2014年5月5日月曜日

採用に学歴は関係あるか

私は国際交流サービス協会の派遣職員(派遣員は全員そうです)ですが、派遣員の採用には全く関わっておらず(むしろ採用される側でした)、以下に記す内容は個人的な見解であることを予めお断りしておきます。

採用の基準に学歴は関係あるのでしょうか。気になる方も多いと思います。

合格者の学歴を全員調べたわけではありませんので確かなことは分かりませんが、同期には概ね四年制の大学の在学中もしくは卒業後5年以内という人が多いようでした。また、他の期の人の話では、修士号を持っていたり10年以上の社会人経験を持っている人も何人かはいるようです。単身者だけではなく、子連れという人もいます。

出身大学は様々ですが、定番の東京外大、大阪外大(現在は大阪大学)などの外国語大学の出身者はやはり多かったと思います。また、早慶や旧帝大の出身者も何人もいます。対策講座を開口している神田外大の出身者が多いのは毎回のようです。この他にも海外の大学や地方の私立大学の出身者もいましたので、あまり大学の名前にこだわって採用している傾向はないようです。

また10年位前に上限年齢制限が撤廃されましたが、本当にそのとおりになっているようです。ただし、高校卒業が条件となっているとはいえ、20歳未満で合格した人がいるという話は聞いたことがありません。そもそも20歳未満の人は大学に入り立てで忙しく運転免許の取得も間に合わず派遣員試験を受験する人が少ないのかもしれませんが、それに加えてもある程度の即戦力として外務省に貢献できる人材となるとあまり若すぎる人は採用されにくいかも知れません。

仕事とプライベートとの両立

派遣員を目指す人のほとんどは、仕事内容と同じくらい外国での生活に興味を持っていることと思います。実際の業務内容については前回簡単に説明しましたが、派遣員はプライベートをどのように過ごしているのでしょうか。

もちろん仕事をするために派遣されますので、仕事が最優先であることは間違いありません。大使館や総領事館の人員は限られていますので、例えば明日要人が来ます!という大一番で館員総出で頑張っている時に、ちょっと旅行に行きたいので休ませてくださいなどと言うようなことは許されません。忙しい時には一ヶ月の残業時間が軽く50~100時間に達することもあり、土日も休みなく働くということもあり得ます。睡眠が2,3時間しか取れない日が数日続くこともあり、体力的に厳しい中で正確に仕事をこなす気力と覚悟は不可欠と言えるでしょう。

ただし、休日出勤した場合はしっかりと代休がとれるようになっているなど模範的な労務管理がされていますので、あまり忙しくない時期には上司とよく相談した上で休みをとることも十分可能です。

私もそうですが、国内や近隣諸国に出かけて同期と再会を楽しむ派遣員は多いようです。一年も住んでいればだいたいその土地のことは頭に入りますから、まさにプロのアテンドを受けられます。

また、語学学校に通ったり趣味に時間を費やす人も多いですし、現地の邦人社会に溶け込んで任期満了後の働き口を探すのに勤しんでいる人もいます。派遣員になる人にはプライベートを楽しむことがうまい人が多いですね。

また、外務省は大使館や総領事館が設置されている地域を特勤度といって生活の苛酷さに応じてランク付けしているのですが、この度合いに応じて任期中に何度か公費で一時帰国できる制度があります。具体的な制度の解説については「休暇帰国」や「健康管理休暇」で検索すると出てくる公開情報に譲るとして、しっかりと心身の健康が保たれるよう配慮がされていると思います。派遣先によっては、治安が悪くて本当に家と勤務先の往復だけになり娯楽もほとんどないような地域もあると聞きますが、そうした地域に派遣されたとしてもこのようにある程度の福利厚生制度はありますので安心してください(ただし、退避勧告が出ているような地域には派遣員は勤務しません。)。

勤務環境や館内の狭い人間関係などに悩み、精神的に参ってしまう人は派遣員にも外務省の職員にもいますが、こうした休暇制度を活用したりオンとオフをしっかり切り替えることで、仕事とプライベートを両立させていくことは十二分に可能であると思います。

2014年4月13日日曜日

実際の業務

赴任先ではどのような業務を担うことになるのでしょうか。

派遣員制度は労働者派遣法に基づき運営されているため、派遣員が担当できる業務はこの法律で裏付けができるものに限られます。

しかし、担当できる業務の中でも実際に何を任せてもらえるかは、館の規模や上司の方針によって大きく異なります。

ほぼ全ての派遣員が担当しているのは便宜供与といって公務で渡航してくる方が本来の仕事に集中できるように送迎したりホテルをとったりする業務でしょう。数十~百人の館員を抱える大規模公館(在米中韓大使館、国連代表部など)では派遣員も複数配置されており、配属先の部署によっては毎日この便宜供与を専門的に行うようになる場合もあります。

小規模な公館になると、便宜供与の回数は限られてくるので、普段は現地職員と館員の間に入って通訳をしたり、文書の翻訳をしたりすることが多くなるようです。また、館員の出張の手配をしたり、事務作業を手伝ったりしている派遣員もいます。

近隣諸国に要人の往来があれば、出張して現地での運営にあたることもあります。

全ての業務に共通して言えるのは、華々しさは全くないということです。そういうところはキャリアや専門職と呼ばれる外交官が担当しており、派遣員はそうした外交官が仕事に集中できるよう環境づくりをする地味な仕事を担当すると思ってください。

表舞台に立つことはほぼ無いため、そういうことを望んでいるのであれば派遣員は向いていないと思います。ここは結構勘違いする受験者がいるようですが、面接でそれを見抜かれると不合格となります。と、いうかそのギャップを理解せず合格しても三年間任期を全うするのは難しいでしょう。気をつけましょう。

2012年6月10日日曜日

報酬について

在外公館派遣員の報酬について、興味を持っている人も多いと思います。

よく「海外で十分生活出来るだけの給料」とか言われていますが、実際に赴任するとまさにその通りだなあと思います。ここ数年で削減が進められたこともあって確かに外交官の方とは比較にならないほど抑えられていますが、節約すれば帰国までに結構な額を貯金する人もいますよ。

報酬の構成は、国内報酬と在外報酬に分かれています。国内報酬とは、基本給にあたるもので、こちらは派遣国に関わらず全員一律となっています。在外報酬とは、勤務地での必要経費として支給されるもので、国内報酬と同額もしくはそれ以上となります。

北米やヨーロッパなど先進国に派遣される場合は、在外報酬は低くなります。インフラが整っていますし、当然といえば当然かもしれません。逆にアフリカなど途上国に派遣される場合は在外報酬が上がります。公共交通機関がなく車を買うことが必須であったり、良質な食材が非常に高額であったりといろいろと出費がかさむ場合が多いので、その点が考慮されているものと思います。

二次試験会場の控え室に公館ごとの支給額が掲載されていますので、参考になさると良いでしょう。

海外での生活には色々とお金がかかるものですが、低利貸付制度なども充実していますので、手持ち資金がゼロでも安心して赴任できますよ。安心して、試験対策を進めてください。

2012年5月20日日曜日

一次試験の正解数と正答率

76回派遣員試験を受験なさった方、お疲れ様でした。二次試験も気は抜けませんので、しっかりと対策をされると良いと思います。

さて、ご質問を頂きました。

今回(本日)、初めて派遣員の1次試験を受けてきた者です。このようなサイトを立ち上げてくださり、本当にありがとうございます。とても嬉しく、また大変助かります。
おっしゃる通り、私自身は情報収集をネットに頼るしかなく、手持ちの情報の少なさはハンデではないかと感じておりました。(実力不足が一番のハンデなのはよく承知していますが)
さて、早速ですが、ご存じでしたら教えてください。
<一般常識の試験の点数は、「正解数」だけでなく、「正答率」も関係があるのでしょうか>
(昔受けた入社試験では、正答率が加味されることもあり、そのような場合は、時間不足になっても、最後にむやみにマークすることは避けていました)
どうぞよろしくお願いいたします。ぜひこれからもお力を貸してください
私も地方に住んでいましたのでネットでかき集めた情報を頼りに対策を立てました。第三者の斡旋で受けるのも良いですが、自分で情報を集めて分析できるような人こそ派遣員に向いていると思いますよ。

ご質問に対するお答えをする前にまずお断りしておきたいのですが、私は採用担当者ではありませんので選考基準に関して正確な情報は持ちあわせておりません。あくまで国際交流サービス協会とは一切関係のない私見としてお答えすることをご了承ください。私の書いた内容が元で損害が発生したとしてもいかなる責任も負えませんので、念のため。

私の感触では、正答率はさほど重視されていません。当の本人が正答率など考えずに回答しまくった結果合格したということくらいしか理由を挙げることはできないのですが、時に厳しい環境で最後までやりぬくことができるかどうかを試そうとしているのですから、解ける問題だけ解くというようなスタンスの受験者よりも、とにかくやりきるという姿勢でいる受験者のほうが好意的に見られるとしても不思議ではありません。

また、一般常識試験は一次試験の一つの要素でしかありません。必要最低限の素養を確かめていると思ってください。意外に重要なのが性格検査かもしれないと思います。公館によって事情はそれぞれですが、生活環境や人間関係などで悩んだ結果任期を全うできない派遣員もいます。しかし多方面に迷惑がかかるそういう事態の発生はどうしても避けなければなりません。したがって、本人は大丈夫だと思っていてもそのような可能性が予見される受験者は不合格になると思います。そういう意味では試験の結果に加えて、身上書の内容もかなり合否判定に関わっているのではないかと感じます。

一般常識試験の出来不出来に一喜一憂してしまうのも理解できますが、それが合否基準の大きなウエイトを占めているわけではないと予想されるため、二次試験に向けて着々と準備を進めていくのが正しい受験の仕方です。

以上、ご参考になったでしょうか。

2012年4月22日日曜日

在外公館派遣員制度とは?

はじめまして。

私は現在某国大使館にて在外公館派遣員として勤務しています。私のように大した学歴や経験も無い人物がいかにして海外で働く機会を得たのか、このブログで説明していきたいと思います。

日本政府は平成24年1月現在で205の在外公館を世界中に設置しています。それぞれ役割によって大使館や総領事館と呼ばれ、外交交渉や邦人保護など外交活動の最前線としての役割を担うことが期待されています。

在外公館の中では様々な立場の人が働いています。中核的にいるは、外務省に所属する外交官です。彼らは外国政府との交渉や情報収集、またトラブルに巻き込まれた日本人の援護を任務としています。日本の外交官はG8のなかではかなり少なく慢性的な人員不足の中での在外公館運営を強いられているのですが、何人配置するかは法律で定めらていますから簡単に増員することはできません。そこでさほど外交官でなくてもできる業務を現地職員そして我ら在外公館派遣員が引き受けることにより、外交官が重要な業務に専念できる体制を敷いています。

在外公館派遣員は、外務省の外郭団体である社団法人国際交流サービス協会の契約社員として採用され、世界各地に派遣されます。派遣員になるための条件は協会のページに記されていますが、日本国籍を持っていることと高卒以上であることなど非常にハードルの低いものとなっています。したがって毎年二回行われる採用試験で高得点を取ることが重要になります。

二次試験を突破してしばらくすると「あなたは○○大使館から内定が出ていますがよろしいですか?」と電話連絡があります。ここで受諾すれば内定書が交付され、後日行われる研修に参加します。研修を終えると一旦自宅に戻り、そこから猛スピードで海外転居の準備を進めていくことになります。

海外で働くという得難い経験ができるこの在外公館派遣員制度ですが、あまり知られていないこともあり、東京外国語大学・大阪外国語大学・神田外国語大学など外国語大学の関係者が先輩・後輩間で情報をやりとりして受験・合格といったケースが多いようです。もっと正確な情報を大勢の人が入手できるようになれば優秀な人材が派遣員になってくれるのではないかと期待しています。このブログが受験を考えている人の役に立てば幸いです。

尚、派遣員は機密情報を扱う場所で勤務する場合もあるため、業務上知り得た内容には厳しい守秘義務が課せられています。当ブログではそのような内容に関わることは一切お答えいたしかねます。